こんにちは、YAMAORI管理人です。
8/22-24の2泊3日の行程で伊藤新道を経由し三股山荘へ至り、裏銀座コースで高瀬ダム下山までの行程を実施しました。宿泊はツェルトを用いたテント泊でした。
前日8/21
いつもの相棒と成田空港へ降り立ち、レンタカーを借りて上諏訪駅へ。
上諏訪駅にてもう1人のメンバーをピックアップして、宿泊予定のキャンプ場へ。
食材を買い込み夜会。山のことや仕事の事を語らい酒を飲み飯を食らう。最高の夜でした。
8/22
七倉へ向かい、朝イチのタクシーに乗り込む。高瀬ダムへ。車窓から唐沢岳幕岩をまじまじと見つめていると、運転手さんが話しかけてきた。
「昨日、あの岩を登るって言っていた人達を送ったよ」
猛者だ。猛者が幕岩に取りついている。それを思うだけで気持ちが高揚してきた。今日からの行程に登攀要素は無いが、広大な山域に小さな身を引きずって入っていくのだ。気が引き締まる思いがした。いつかはあのクラシックルートに取りついてみたい。幕岩に張り付くクライマーの姿を空想しながら車に揺られた。

高瀬ダム
ダムの上で下車した我々は、湯俣山荘の方へ歩みを進める。2時間ほど舗装された道を歩く。


右岸を歩く。右手を流れる清流にいちいちはしゃぐ。はるばるここまで来たのだ。無理は無い。
晴嵐荘へは寄らずに、そのまま湯俣川の沢筋へ入っていく。いよいよ登山開始。
登山開始
ヘルメットと泳ぎが不得意な私は仰々しいオレンジ色のライフジャケットを着る。


沢へ降りると巨大な岩壁が左右から迫るように立っていてその姿に興奮する。こんなに大きな沢は歩いたことがない。



渡渉に次ぐ渡渉と、たまに吊り橋を渡る。途中には岩に足場が打ち込まれて整備されている箇所もあり、飽きずに楽しい。
楽しいが、水の深い所では流芯の流れが強く気を抜くと足をさらわれそうな場所もあって中々気は抜けない。
計画を立ててから、かなり楽しみにしていた伊藤新道を歩いている。気分上々で歩みを進めていたが、少し不穏な事が起きた。
ごろごろと遠くで雷鳴が響き空を揺らす。曇天模様の中、雨が降ってきた。谷筋に直接落雷する事は無いだろうがエスケープの難しいこんな場所では皆目が泳ぐ。しばらく岩陰で雨宿りをして、小雨になったところで遡上再開。

沢パート終わりのビバークポイントに到着した時にはもうとても三股山荘まで上がれる時間ではなかった。本当なら今日は三股山荘でテント泊をする予定であったが、雨宿りで時間を取られたのと、前日に晴嵐荘まで来ていなかった事が、この行程ミスの原因だろう。仕方が無いのでここで幕営、今日はここで寝る事にした。
幸いにも雨は上がって、風のない谷底は心地良い夏の空気に満たされていて快適だった。
濡れた服を干し、皆で円になって食事をした。こんな事なら下でビールでん買って来とったら良かったねぇ、なんて笑いながら、夕餉を楽しんだ。
日のある内に私達はそれぞれのテントに潜り込んで眠った。快適な寝床だった。
私は、ふと夜中に目が覚めて何かに導かれるようにツェルトの外に出た。闇を月明かりがぼんやりと照らしていて明るい。ヘッドライトの明かりが無くても視界は良好だった。
薄暗い谷底に沢の水が流れる音が響いていた。岩を打ち付けるような乾いた音と、小滝の水が深い所に潜り込む時の泡混じりのしっけた音、その他色々な水の音が複雑に混ざりあって聞いていて飽きない。
水の音を楽しんでいた。
不意に空を見上げた。
そこには息を呑むほどに美しい星空が眩く輝いていた。せり立つように迫る岩壁に谷の形に切り取られた夜空に満遍なく星が散りばめられ、目を疑う程に明るい月がぽつりと一点輝き、月を中心に星の光がグラデーションの様に夜空に広がっていて、一枚の絵の様な夜空が網膜を貫いた。
目が離せなかった。
水の音も聞こえなかった。
私はしばらくの間立ち尽くし、不意に吹いた突風に現実に引き戻されて、身を震わせながらツェルトの中のシュラフに潜り込んで眠りに着いた。
私は生涯、あの夜空の星の瞬きと月明かりを忘れはしないだろう。
充実の山行だった。